神経成長因子(NGF)は代表的な神経栄養因子である。しかしNGF前駆体とその成熟型NGFは、それぞれp75とTrkAを高親和性受容体として、全く相反する細胞死誘導活性と生存維持活性を示す。この生理的意義はなにか?神経栄養因子とは何か? NGFは発見されて以来、常に時代を先取りする新しい問題を提示し続けてきた。この難問をクリアしたとき新しい神経科学の地平が見えてくる。そんな分子である。
(古川昭栄 神経成長因子の研究がもたらしたもの -時代を先取りする先導分子- p.110)