日薬理誌 115 (3), 151-160 (2000)


カンデサルタン シレキセチル:
新世代のアンジオテンシンII受容体拮抗薬の薬理特性と臓器保護作用
  

稲田 義行1)、仲  建彦2)

武田薬品工業(株),医薬開拓研究本部1),創薬研究本部2)
〒532-8686 大阪市淀川区十三本町二丁目17-85

要約: 非ペプチド型アンジオテンシンII(AII)AT1サブタイプ受容体拮抗薬,カンデサルタン シレキセチルは腸管吸収の過程で完全に活性体のカンデサルタンに変換される.In vitroの血管標本でカンデサルタンはAIIの収縮曲線の最大収縮を濃度に依存して抑制し,insurmountableな拮抗作用を呈し,高濃度のAIIのAT1受容体を介する作用を確実に抑制させる.結合阻害実験の成績からカンデサルタンがAT1受容体に強固に結合し,その解離が遅いことが示唆されている.カンデサルタン シレキセチルの抗高血圧作用は種々の高血圧モデルにおいて認められており,高血圧自然発症ラットにおいて,カンデサルタン シレキセチルは0.1〜10 mg/kgという低用量で持続性の降圧作用を発現した.カンデサルタン シレキセチルの持続的な降圧作用は高血圧症患者におけるtrough/peak比からも確認されている.AII受容体拮抗薬の投与によりAII濃度は増加することが知られており,上昇したAIIは受容体へ拮抗薬と競合し結合する.AII濃度が上昇した場合insurmountableな拮抗薬はsurmountableな拮抗薬よりもAIIの作用を効果的に抑制し,有利に働くものと考えられる.多数の研究おいてカンデサルタン シレキセチルが降圧作用に加えて臓器保護作用を有することが示された.AT1受容体拮抗薬はACE阻害薬と同様に高血圧症の治療のみならず,心臓不全および腎疾患の治療に加え,他の循環器疾患の治療および防止に役立つものと期待される.

キーワード: カンデサルタン シレキセチル, アンジオテンシンII受容体拮抗薬, 高血圧症, 心不全, 腎障害

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