日薬理誌 115 (6), 329-335 (2000)


インスリン分泌調節機構:分泌カスケードの解析と創薬の可能性

仁木 一郎

名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報薬理
〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞65

要約: 膵B細胞から分泌されるインスリンは,唯一の血糖降下ホルモンである.インスリンの分泌不全と感受性低下が混在している2型糖尿病において,残存する膵B細胞のインスリンを放出させて血糖を調節する,というストラテジーは,約60年前のスルホニル尿素剤の発見に端を発して,現在も盛んに続けられている.一般に分泌物は,分泌顆粒の生成に始まり,細胞内トラフィック,細胞膜へのドッキング/プライミングを経て開口放出によって細胞外へ放出される(分泌カスケード).膵B細胞の分泌カスケードにおいても,最近の細胞生物学的手法の進歩により開口放出の上流の調節機構が明らかにされてきた.本稿では,膵B細胞を特徴付けている栄養物質・ホルモン・神経伝達物質などの制御因子について述べ,分泌カスケードに従ってインスリン分泌調節機構を概説した.さらに,分泌カスケードの解析がもたらす,インスリン分泌をターゲットとする新しい抗糖尿病薬開発への展開についても触れる.

キーワード: 膵B細胞, インスリン分泌, 分泌カスケード, スルホニル尿素, 抗糖尿病薬

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