日薬理誌 115 (6), 345-351 (2000)


新生ラット鎮痛試験法―発痛物質誘発体動の定量―

窪田 一史

三共(株)第三生物研究所
〒140-8710 東京都品川区広町1-2-58

要約: 発痛物質を新生ラットの背部皮下に投与することで生じる体動を定量化し,薬物の鎮痛作用を検出する方法を開発した.体動の定量化のために音響用スピーカーを検出器とした装置を作製した.カプサイシンを投与すると,動物は投与部位を引っ掻いたり,もがいたりする侵害受容行動を起こした.この体動の量を本装置で1分ごとに測定したところ,0〜1分の間にピークがみられ,その後1〜3分にかけて減少していくという一過性の反応が検出された.さらに,そのピーク時において最大作用用量が3000 ng/bodyである用量依存的な反応が検出された.内因性発痛物質であるブラジキニン,セロトニン,ヒスタミンもカプサイシンと同様に一過性の反応を引き起こした.これに対し外因性発痛物質であるホルマリン,酢酸は持続性の反応を引き起こした.カプサイシン誘発体動に対する各種薬物の作用を調べたところ,この体動はオピオイド化合物であるモルヒネ,ブプレノルフィン,ペンタゾシンにより抑制された.しかしながら,非ステロイド性抗炎症薬であるインドメタシン,イブプロフェン,アセトアミノフェン,そして,鎮静薬であるジアゼパム,クロルプロマジンによって抑制されなかった.以上の実験結果より,新生ラットのカプサイシン誘発体動を指標にした本鎮痛試験法は,μオピオイド活性を有する化合物の鎮痛作用を簡便に検出できる有用な方法であることが示された.

キーワード: 鎮痛試験法, 体動, 発痛物質, 新生ラット

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