日薬理誌 116 (2), 63-69 (2000)


前立腺肥大症に伴う排尿障害治療薬ナフトピジルの薬効薬理

生垣 一郎

旭化成工業(株)ライフサイエンス総合研究所 薬理第一研究所
〒410-2321 静岡県田方郡大仁町三福632-1

要約: ナフトピジルはフェニルピペラジン誘導体に属する新規のalpha1アドレナリン(alpha1)受容体遮断薬であり,前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬である.ナフトピジルはヒト前立腺膜標品のalpha1受容体への[H]プラゾシンの結合を競合的に拮抗し,Ki値は11.6 nMであった.クローニングされたヒトalpha1受容体サブタイプ(alpha1a,1b,1d)に対する親和性を調べたところ,ナフトピジルは,alpha1a‐およびalpha1b‐受容体サブタイプに対する親和性よりalpha1d‐受容体サブタイプに対する親和性が約3〜17倍高かった.フェニレフリン投与イヌモデルにおいて,ナフトピジルは血圧に比べて前立腺部尿道内圧に対してより高い選択性を示した.ナフトピジルの前立腺部尿道内圧に対する選択性はタムスロシンやプラゾシンよりも高かった.また無麻酔ウサギtiltingモデルにおいて,ナフトピジルはタムスロシンやプラゾシンよりもtilting時の血圧反射に及ぼす影響が小さかった.臨床試験においても,本剤は前立腺肥大症に伴う排尿障害患者の自覚症状と他覚所見に対する有効性が確認され,本邦において前立腺肥大症に伴う排尿障害治療薬として承認を取得し,臨床で使用されている.


キーワード: ナフトピジル, alpha1アドレナリン受容体遮断薬, 前立腺肥大症, 排尿障害

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