日薬理誌 116 (5), 263-268 (2000)


GP IIb/IIIa拮抗薬の現状と新薬開発

近藤 一直

浜松医科大学 薬理学教室
〒431-3192 浜松市半田町3600
e-mail: k17kondo@hama-med.ac.jp

要約: 急性冠動脈症候群を始めとする血栓性疾患の治療薬として,血小板glycoprotein IIb/IIIa受容体拮抗薬(IIb/IIIa拮抗薬)が開発され,[1]モノクローナル抗体,[2]合成ペプチド,[3]非ペプチド,[4]経口薬,の4群が登場した.IIb/IIIa拮抗薬はフィブリノゲンを介した血小板相互の結合を阻害することから,血小板相互の結合に選択性が高いこと,刺激の種類を問わず総ての凝集反応を抑制できること,強力な凝集抑制効果が見込まれたこと,などを理由に臨床応用への期待が高まったが,現在までに公表された大規模臨床試験の結果はモノクローナル抗体のみが有効性を示し,非ペプチドおよび経口薬は無効であった.この様な結果が出た根拠としては,(1)血小板との結合時間の長さ,(2)GP IIb/IIIa以外の接着分子に対する抑制効果,(3)受容体における結合サイトの違いと部分的アゴニスト作用の存在,(4)caspaceの活性化を介した凝集促進またはアポトーシスの誘導,(5)遺伝子変異による凝集能の修飾,などの因子が影響している可能性が考えられた.今回の知見をもとに血小板の生理機能に関する解明が進み,新たな薬物あるいは治療法の発見につながることが期待される.


キーワード: 血小板凝集, glycoprotein IIb/IIIa, abciximab, 経口 IIb/IIIa 拮抗薬

日本薬理学雑誌のページへ戻る