日薬理誌 116 (6), 351-358 (2000)


メカノセンサー機構の実体と機能―新しい視点からの創薬への展望―

大幡 久之(1)、中山 貢一(2)

(1)昭和大学薬学部薬理学教室
〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8
e-mail: ohata@pharm.showa-u.ac.jp
(2)静岡県立大学薬学部薬理学教室
〒422-8526 静岡市谷田52-1
e-mail: nakyamk@ys7.u-shizuoka-ken-ac.jp

要約: 機械受容応答は,様々な細胞において生理的および病態生理学的に重要な役割を果たしていることを示す結果が蓄積されつつある.しかしながら,機械受容分子の実体は今なお明らかではなく,その下流の伝達系路についても不明な点が多い.従って,この機械受容応答の分子機構を明らかにすることは,この機構が関与する様々な生理的な細胞応答や病態の解明に寄与するだけでなく,新たな角度からの創薬への可能性につながるものと考えられる.第73回日本薬理学会年会のシンポジウム14「メカノセンサー機構の実体と機能−新しい視点からの創薬への展望−」では,この分野における次の5つの研究グループの最近の取り組みについて報告し,議論した.1)張力感受性イオンチャネル単離の試み,鈴木誠ら(自治医科大学薬理);2)血管内皮細胞における機械的刺激によるATP放出,大池正宏ら(九州大学大学院医学研究院生体情報薬理);3)リゾホスファチジン酸は機械受容機構の内因性調節物質として働く,大幡久之ら(昭和大学薬学部薬理);4)イヌ脳底動脈における張力発生を伴わない伸展誘発性ミオシン軽鎖のリン酸化について,小原一男ら(静岡県立大学薬学部薬理)及び5)平滑筋形質変換の分子機構,永井良三(東京大学大学院医学系研究科循環器内科).本稿は,このシンポジウムの概要をとりまとめたものである.

キーワード: 機械受容機構, 張力感受性イオンチャネル, 細胞内カルシウムイオン濃度, ミオシン軽鎖のリン酸化, 転写因子

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