日薬理誌 117 (2), 105-110 (2001)


MPTP性パーキンソニズムとフリーラジカル

小畑 俊男,山中 康光

大分医科大学薬理学教室
〒879‐5593 大分県大分郡挾間町医大ヶ丘1‐1
e‐mail: tobata@oita‐med.ac.jp

要約: 1‐Methyl‐4‐phenyl‐1,2,3,6‐tetrahydropyridine(MPTP)と鉄によって引き起こされるドパミン(DA)性神経障害に活性酸素が関与している.これはB型モノアミン酸化酵素(MA0‐B)により1‐methyl‐4‐pheny1pyridinium cation(MPP)に変化した後,パーキンソン病が発現するが,その病因に酸化的ストレスの関与が考えられている.MPPは強力なDA放出促進薬の一つであり,DAの自動酸化と,スーパーオキシドアニオン(O )を介してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる作用がある.すなわち,レセルピンによりDAを枯渇させるとMPPによる・OHの産生が低下した.またアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるイミダプリルはアンジオテンシン(II)によるDAの放出を抑制することより,MPPによる・OHの産生を抑制した.一重項酸素(O)のスカベンジャーであるヒスチジンによっても・OHの産生が抑制され,MPPにより産生されるラジカル種にOの存在が示唆された.さらに低密度リポタンパク質(LDL)の酸化阻害薬であるフルバスタチンによって・OHの産生が抑制された.これはLDLの酸化が・OHの産生に関与していることを示している.これらの薬物はMPPにより引き起こされる活性酸素を抑制する作用を有することより,抗パーキンソン病薬としての応用が可能と思われる.

キーワード:1‐methyl‐4‐pheny1pyridinium cation(MPP),パーキンソン病,フリーラジカル,活性酸素,マイクロダイアリシス

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