日薬理誌 117 (2), 131-137 (2001)


新規免疫抑制薬Mycophenolate Mofetil(CellCeptR)の薬理学的特徴

八島由紀彦1),大金 亨2)

1)日本ロシュ株式会社研究所 前臨床科学研究部
〒247‐0063 神奈川県鎌倉市梶原200
e‐mail: yukihiko.yashima@roche.com
2)同.医薬マーケティング本部
〒105‐8532 東京都港区芝2‐6‐1

要約: 新規免疫抑制薬mycophenolate mofetil(MMF, CellCeptR)は,真菌由来化合物であるmycophenolic acid(MPA)の経口的バイオアベイラビリティを改善する目的で合成されたプロドラッグで,腎移植後の難治性拒絶反応の治療薬である.MPAはGTPのde novo合成における律速酵素であるIMP dehydrogenase(IMPDH)を特異的に抑制(IC50=25 nM)することで,GMP産生を選択的,可逆的かつ不競合的に阻害する.したがって,MPAの投与によりguanidine nucleotideの供給を主としてde novo系に依存しているTおよびBリンパ球の増殖・活性化を選択的に阻害され,細胞傷害性T細胞産生の抑制あるいは抗体産生能の抑制などの免疫抑制作用が発現する.一方,MPAはIL‐2レセプター発現を抑制しないことから,リンパ球の増殖能に対し選択的に影響することが示唆されている.イヌを用いて検討された同種腎移植モデルにおいて,急性拒絶反応の発現を抑制し,移植臓器の長期生着の可能性を示した.また,イヌを用いた実験的移植片対宿主病(GVHD)モデルにおいては,MMFとcyclosporine A(CsA)の併用投与で,拒絶反応の発現が抑制され,投与中止後も長期にわたり移植臓器が生着したことから,免疫寛容誘導の可能性も示唆された.さらに,本邦あるいは海外において実施された腎臓移植に対する臨床試験においても,移植腎の長期生着を可能にし,拒絶反応出現の抑制効果が認められている.

キーワード: ミコフェノレートモフェチル,ミコフェノール酸,プリン生合成阻害,臓器移植,急性拒絶反応

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