日薬理誌 117 (4), 248-254 (2001)


痛み,発熱とプロスタノイド

倉石  泰1),牛首 文隆2)

1)富山医科薬科大学薬学部薬品作用学研究室
〒930‐0194 富山市杉谷2630
e‐mail: kuraisiy@ms.toyama‐mpu.ac.jp
2)旭川医科大学薬理学講座
〒078‐8510 旭川市緑が丘東2条1‐1‐1

要約: プロスタノイドが痛覚修飾と発熱に関与すること‐は古くから知られていたが,8種類存在するプロスタノイド受容体とそのサブタイプの役割についてはほとんど不明であった.しかし,プロスタノイド受容体欠損マウスを応用した最近の研究が,この問題に光を当てつつある.末梢組織の炎症あるいは感覚神経障害により生じる疼痛反応および熱刺激に対する痛覚過敏は,IP受容体の欠損により消失する.神経因性痛覚過敏は,EP1あるいはEP3受容体の欠損により影響を受けない.一方,感覚神経障害により生じるアロディニアは,EP3受容体の欠損により消失あるいは顕著に抑制されるが,IP受容体あるいはEP1受容体の欠損では影響を受けない.PGE2を野生型マウスの脳室内に投与すると,強い発熱反応が惹起される.しかし,EP3受容体欠損マウスではこの反応が欠失する.さらに,内因性発熱物質であるIL‐1βや外因性発熱物質であるLPSによって惹起される発熱反応も,EP3受容体欠損マウスで特異的に消失する.この結果,PGE2が発熱の最終的なメディエーターであり,この作用はEP3受容体によって仲介されることが明らかとなった.

キーワード: プロスタノイド,プロスタグランジン,痛覚過敏,アロディニア,発熱

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