日薬理誌 117 (4), 299-306 (2001)


遺伝子治療の現状と将来展望

金田 安史

大阪大学医学系研究科遺伝子治療学教室
〒565‐0871 吹田市山田丘2‐2
e‐mail: kaneday@gts.med.osaka‐u.ac.jp

要約: 最初の遺伝子治療臨床研究が始まって10年が経過した現在,遺伝子治療の問題点がクローズアップされてきた.遺伝子導入技術の改良がやはり成功の鍵を握るため,低侵襲性・高効率ベクターの開発が活発に行われている.既存のベクターの改良や,新規物質やウイルスの開発,さらに複数のベクター系を組み合わせて短所を相補するようなハイブリッドベクターともいうべき概念が生まれてきた.一方,標的疾患については遺伝病のいくつかや生活習慣病において現在の未熟な遺伝子治療技術であっても治療可能な疾患が見出されてきた.しかし癌についての遺伝子治療臨床研究は現在まだ試験段階にあると考えるべきであろう.遺伝子治療をさらに効果的な医療に結びつけるために,基礎研究と臨床研究,各々の進展と,それらがうまくかみ合った上で,産業界との結びつきも必要となってきている.このような体制の整備が問題である.

キーワード: 遺伝子治療,遺伝子導入,遺伝子発現

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