日薬理誌 117 (5), 335-342 (2001)


ピオグリタゾンのインスリン抵抗性改善作用

池田  衡,杉山 泰雄

武田薬品工業(株)創薬研究本部
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要約: チアゾリジンジオン誘導体ピオグリタゾンは当社における糖尿病モデル動物の基礎研究と脂質低下薬の合成研究の出会いから生れたインスリン抵抗性改善薬である.インスリン抵抗性を示す種々糖尿病動物において顕著な血糖および脂質低下作用を示した.その作用機序に関しては,インスリン受容体以降の細胞内インスリン情報伝達機構の障害を正常化させるユニークな機作が関与する.未だ完全に明白ではないが,細胞内情報伝達機構の正常化には,インスリン抵抗性惹起物質であるTNF‐αの産生および作用抑制が関与し,さらにTNF‐α経路とリガンド依存性核内受容型転写因子PPAR‐γとの関連が推測される.2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病:NIDDM)患者において,1日1回15‐45 mgの用量で血糖およびHbA1cを低下させた.脂質に関しては,トリグリセリドの低下とHDL‐コレステロールの上昇がみられた.以上のことから,糖尿病に合併するmicro‐angiopathyとmacro‐angiopathyの治療および防止に役立つものと期待される.

キーワード: ピオグリタゾン,インスリン抵抗性,PPAR‐γアゴニスト,細胞内インスリン情報伝達機構,TNF‐α産生抑制作用

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