日薬理誌 117 (6), 377-386 (2001)


胃粘膜防御因子増強作用を有するヒスタミンH受容体拮抗薬ラフチジン(ストガーR,プロテカジンR)の薬効薬理作用および臨床効果

田中 正人1),番場  勝2),上甲 章弘3),森山 泰寿4)

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要約: ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬のような強力な酸分泌抑制薬の開発により消化性潰瘍の治療は劇的に進歩し,大部分の患者で治癒に導くことが可能となった.しかしながら,潰瘍の再発に対しては抑制できないことが明らかにされ,またNSAIDsの副作用である消化管粘膜傷害に対しても充分な有効性が得られず問題とされている.そこで,胃酸分泌抑制作用と防御因子増強作用を示すことにより,これまでの抗潰瘍薬より有用性の高い抗潰瘍薬を創出できるとの考えにより創薬研究を行い,ラフチジンを見出した.ラフチジンはin vitroにおいて強力で持続的なH2受容体拮抗作用を有し,in vivoでは持続的な胃酸分泌抑制作用を示した.一方,ラフチジンはラットにおいて各種壊死物質による胃粘膜損傷の発生を,カプサイシン感受性知覚神経を介した作用により用量依存的に抑制した.ラフチジンは各種急性潰瘍モデルにおいて抗潰瘍作用を示し,ラットの酢酸胃潰瘍の再発を抑制した.さらに,インドメタシンによる幽門前庭部潰瘍に対しても抗潰瘍作用を示した.これらの作用は,ラフチジンが胃酸分泌抑制作用に加え粘膜防御因子増強作用を有することの有用性を示唆するものである.ラフチジンは臨床においても持続的かつ強力な胃酸分泌抑制作用を示し,胃・十二指腸潰瘍,胃炎に対してこれまでのH2受容体拮抗薬と同等の効果を示した.そこで,胃潰瘍に対する治療効果を超音波内視鏡を用いて判定したところ,E0期への移行率は45.5%であり,これまでに既存薬で報告された値と比較して高い値であることから,ラフチジンは治癒の質を向上させることが示唆される.さらに,H2受容体拮抗薬では効果の乏しいNSAID潰瘍に対しても通常の胃潰瘍と同程度の有効性が得られた.これらの結果から,ラフチジンは臨床においても既存のH2受容体拮抗薬と同等以上の抗潰瘍作用を有することが明らかであり,さらに潰瘍の再発やNSAID潰瘍に対する有用性が期待される.

キーワード: ラフチジン,ヒスタミンH2受容体拮抗薬,胃酸分泌抑制作用,カプサイシン感受性知覚神経,胃粘膜防御因子増強作用

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