5‐HT1B/1D受容体作動型片頭痛治療薬コハク酸スマトリプタン(イミグラン注3)
岩澤 義郎1),檀上 卓馬2)
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要約: スマトリプタン(SMT)は,片頭痛が頭部血管の過度の拡張に由来し,その拡張に5‐HTが関与しているという仮説に基づいてスクリーニングされた,5‐HT1受容体作動薬である.5‐HT受容体に対する特異性が高く,ムスカリン,ドパミンD1,D2,アドレナリンα1,α2,β等他の神経伝達物質の受容体にはほとんど結合しない.更に,5‐HT1受容体の内では5‐HT1A受容体にもやや親和性を示すが,5‐HT1B/1D受容体に対する選択性が高く,5‐HT2,5‐HT3受容体にはほとんど親和性を示さない.SMTは,5‐HT1B/1D受容体が分布するとされている脳底動脈,側頭動脈,硬膜内動脈など頭部の各種動脈の摘出標本を収縮させるが,冠動脈,大腿動脈,腸間膜動脈などをほとんど収縮させなかった.この事実を反映して,麻酔動物を用いた実験では,頚動脈血管抵抗を選択的に増加させ,他の部位の血管には殆ど作用しないことが示された.これらの成績は,従来片頭痛治療に用いられていた麦角アルカロイド類が,頭部動脈だけでなく冠動脈を初め多くの他の血管をも収縮させることと著しく異なっている.さらにSMTは,三叉神経終末に作用してCGRP等の放出を抑制し,三叉神経支配領域で神経原性のタンパク漏出,血管拡張を抑制する.SMTは,いわゆる鎮痛作用を示さなかったので,5‐HT1B/1D受容体を介して過度に拡張した頭部血管を収縮させると共に,神経原性の炎症を抑制することによって片頭痛治療効果を発揮しているものと考えられる.SMTは既に欧米約100カ国で承認されており,その片頭痛と群発頭痛に対する臨床効果は確認されている.わが国においても,オープン試験とプラセボ対照二重盲検試験で有効性と有用性が確認された.
キーワード: スマトリプタン,片頭痛,5‐HT受容体,脳血管
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