日薬理誌 117 (6), 401-409 (2001)


新規抗アレルギー薬塩酸オロパタジンのイヌ心電図QT間隔に対する作用

岩本健一郎,池田 淳一,二藤 眞明,小坂 信夫,市川 俊司,小林 弘幸,大森 健守

協和発酵工業(株)医薬総合研究所
〒411‐8731 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188

要約: 塩酸オロパタジン(以下 オロパタジン)は,アレルギー性鼻炎,慢性じんま疹,湿疹・皮膚炎等に有効な抗アレルギー薬である.抗アレルギー薬のテルフェナジンやアステミゾールが,循環器系の副作用として心電図QT間隔延長やそれにともなう重篤な心室性不整脈(torsades de pointes)を発現することが報告されている.今回,オロパタジンの心電図QT間隔延長作用の有無について,意識下の正常犬および抗真菌薬でCYP3A4阻害作用を有するイトラコナゾールとの併用投与,さらに麻酔下低カリウム血症犬に対する作用を検討した.テルフェナジンは,意識下正常犬において単独投与時には30 mg/kg(p.o.)で,イトラコナゾール100 mg/kg(p.o.)1時間前投与時には10 mg/kg(p.o.)でQT間隔延長作用を示した.一方,オロパタジンは,意識下正常犬において, 30 mg/kg(p.o.)単独投与時およびイトラコナゾール併用投与時ともに,QT間隔延長を示さなかった.さらに,麻酔下低カリウム血症犬においても,1 および 5 mg/kg(i.v.) でQT間隔延長を示さなかった.以上の結果から,オロパタジンがQT間隔延長作用を発現する可能性は低いと考えられた.

キーワード: オロパタジン,QT間隔,イヌ,イトラコナゾール,低カリウム血症

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