日薬理誌 118 (2), 89-95 (2001)


神経因性疼痛評価のための末梢性疼痛試験法

植田 弘師,井上  誠

長崎大学薬学部分子薬理学研究室
〒852‐8521 長崎市文教町1‐14
e‐mail: ueda@net.nagasaki‐u.ac.jp


要約: 神経因性疼痛は消炎鎮痛薬や麻薬性鎮痛薬に対し抵抗性を示す疼痛疾患である.その疾患としては帯状疱疹後神経痛,カウザルギー,三叉神経痛,糖尿病性神経炎などをはじめ数多く認められ,その苦痛は患者のQOLを著しく損なうものである.この発現機構を解明し有効な治療法を確立するために,これまで様々な実験動物モデルと神経因性疼痛を評価する末梢性疼痛試験法が開発されてきた.なかでも著者らが開発した発痛物質利用と宙吊り法を取り入れた新しい末梢性疼痛試験法は従来型の動物モデルにおける疼痛過敏反応を非常に高感度,定量的に計測でき,分子機構解明に役立つ方法として注目される.著者らは従来型の試験方法と比較しつつこの新しい方法を駆使し,神経因性疼痛に見られる可塑的疼痛過敏応答変化の分子機構の解明へと努力している.本稿では,神経因性疼痛を評価するための様々な動物実験モデルと評価に用いられる末梢性疼痛試験法について解説した.

キーワード: 神経因性疼痛,末梢性疼痛試験法,神経可塑性,NMDA受容体

日本薬理学雑誌のページへ戻る