日薬理誌 118 (3), 147-158 (2001)


筋収縮カルシウム受容調節の分子機構と遺伝性機能障害

大槻 磐男

九州大学大学院医学研究院薬理学講座臨床薬理学分野
〒812‐8582 福岡市東区馬出3‐1‐1
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要約: 横紋筋(骨格筋,心筋)の収縮・弛緩の制御にはCa受容タンパク質トロポニンが関与している.このタンパクは筋肉の細いフィラメントに周期的に分布しており,本来ミオシン・アクチンの収縮反応に抑制的に作用しているが,Caによって脱抑制され収縮反応が活性化される.トロポニンは3つの成分(トロポニンI・C・T)によって構成される複合タンパク質で,抑制成分トロポニンIによる収縮抑制作用とCa結合成分トロポニンCを介しての脱抑制作用が制御作用の基本にある.そしてこの基本過程に最終的にCa依存性を与えるのがトロポミオシン結合成分トロポニンTである.本稿ではトロポニンTの役割を中心に3成分相互作用,分子配置そして最近判明した遺伝性機能障害などについて解説した.

キーワード: 筋収縮調節,カルシウム,トロポニン,トロポニン遺伝子異常,家族性肥大型心筋症

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