日薬理誌 118 (3), 203-210 (2001)


酵母Two‐Hybrid Systemを用いたエストロゲン作用活性の検出法

西原  力,西川 淳一

大阪大学大学院薬学研究科生命情報環境科学専攻微生物動態学分野
〒565‐0871 吹田市山田丘1‐6
e‐mail: nisihara@phs.osaka‐u.ac.jp


要約: 内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン:ED)問題における緊急課題のひとつはED容疑物質のリストアップであり,そのための簡便・迅速なin vitro試験の開発である.われわれはレセプターを介する遺伝子発現プロセスはEDの作用発現においても重要であると考え,最近発見された転写共役因子(コアクチベーター)がリガンド依存的にレセプターと特異的に反応することに着目し,酵母Two‐Hybrid Systemを用いた試験法を開発した.本法は操作性も簡便で,数時間でエストロゲン作用をはじめとするホルモン様作用を再現性高く検出でき,作用発現機構の検討にも有用である.アゴニスト活性だけではなく,該当する本来のホルモンを共存させることによりアンタゴニスト活性が,またS9Mixや活性汚泥で試料を前処理することにより,体内・環境内代謝を考慮に入れた活性も検出できた.これまで国内40以上の試験・研究機関で活用され,天然成分,医薬品,農薬,化学工業品など,500種類以上の化学物質についてエストロゲン作用を評価している.その結果,64物質にアゴニスト活性が検出され,4物質以外はパラ位に疎水性置換基をもつフェノール誘導体であった.本法の今後の課題としては,高感度化,自動化などの改良,本法の結果に基づく構造活性相関法の開発,作用機構の検討とその成果に基づく新試験法の開発などである.これらの成果は内分泌撹乱物質をはじめとする化学物質のリスクアセスメントに貴重な知見となることが期待できる.



キーワード: 内分泌撹乱化学物質,環境ホルモン,酵母Two‐Hybrid試験,in vitro試験法,核内ホルモンレセプター

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