日薬理誌 118 (6), 371-377 (2001)


テトラヒドロビオプテリン研究の将来

一瀬(鷲見) 千穂,大槻 眞嗣,白石 弘章,野村 隆英

藤田保健衛生大学医学部薬理学教室
〒470‐1192 愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1‐98
e‐mail: tnomu@fujita‐hu.ac.jp

要約: テトラヒドロビオプテリン((6R)‐L‐erythro‐tetrahydrobiopterin,BH4)は生体内でGTPを基質として生合成される.生合成酵素は,律速段階であるGTPシクロヒドロラーゼI,6‐ピルボイルテトラヒドロプテリン合成酵素(6‐pyruvoyl‐tetrahydropterin synthase,PTPS),セピアプテリン還元酵素から成る.BH4生成の異常で生じる疾患には,悪性高フェニルアラニン血症,ドパ反応性ジストニアがあるが,パーキンソン病,精神分裂病などにおいてもBH4の代謝異常が原因あるいは増悪因子になっている可能性が示唆されている.一方,BH4は血管保護因子としても注目され,その機能低下が動脈硬化症の発症に関与する.最近,著者らの研究室ではジーンターゲッティングの手法を用いてBH4生合成の第2段階を触媒するPTPS遺伝子を破壊したPTPSノックアウトマウスを作成した.これらモデルマウスを用いた研究がBH4の神経系,循環系疾患の発症における役割やその治療法の開発に貢献すると考えられる.著者らの研究室では,原生動物であるテトラヒメナがBH4の異性体であるテトラヒドロモナプテリンを有しており,そのレベルは細胞周期に関係することを見いだした.BH4以外のプテリン誘導体がヒトの生理・病態にどのように関っているかも興味深い研究課題である.


キーワード: テトラヒドロビオプテリン,GTPシクロヒドロラーゼI,6‐ピルボイルテトラヒドロプテリン合成酵素,ノックアウトマウス,テトラヒドロモナプテリン

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