ブラジキニン受容体拮抗薬の開発現況と今後の展開
平山 良孝1),茅切 浩2)
1)藤沢薬品工業株式会社 薬理研究所
2)藤沢薬品工業株式会社 化学研究所
〒532‐8514 大阪市淀川区加島2‐1‐6
要約: カリクレイン‐キニン系は循環調節,炎症・アレルギー,痛み,ショック等において多くの生理的,病態生理的役割を果たしていると考えられている.キニンの受容体にはこれまでにB1およびB2の2種類が知られており,ブラジキニン(BK)をはじめとしたキニンはそれらの受容体を介して作用を示す.B2受容体は多くの組織において恒常的に発現されており,キニンの大部分の生理学的活性を媒介していると考えられている.一方,B1受容体は炎症反応や組織傷害等により発現が誘導され,炎症反応の維持やそれに伴う痛みに関与していることが示唆されている.B2受容体に対する拮抗薬の研究はBKのペプチドアナログから始まり,最近では非ペプチド性拮抗薬に主流は移っているが,臨床試験結果が開示されているのはペプチド性拮抗薬NPC567,CP‐0127とHOE‐140の3剤である.これらの薬剤は,鼻炎,気管支喘息,全身性炎症反応症候群(systemic
inflammatory response syndrome: SIRS)・敗血症,外傷性脳傷害等で評価され,ある程度BKの関与について示唆する役割を果たしたが,いずれも治療薬として期待されたほどの作用を示したとは言えなかった.また,いずれの試験についても,拮抗薬としての効力や試験時の投与用量・用法に関してB2受容体拮抗薬の力量を充分に判断できる試験であったかどうか,疑問が残されている.今後は新しく見出された拮抗薬を中心に,これら既存の適応症に対する有効性に関して結論が出されるとともに,これまでに試されてこなかった適応症に対しても可能性を確かめられることが望まれる.B1受容体拮抗薬については未だに臨床評価されたものはないが,ペプチドタイプ拮抗薬やB1受容体遺伝子KOマウスでの検討によりその役割が明らかにされつつあり,今後のさらなる研究の進展が期待される.
キーワード: ブラジキニン,キニン,B1受容体,B2受容体,拮抗薬
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