日薬理誌 119 (2), 111-118 (2002)


睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー(R)錠)の薬理学的特性と臨床効果

白川 清治

藤沢薬品工業株式会社 情報開発部 中枢領域担当
〒541‐8514 大阪市中央区道修町3丁目4‐7
e‐mail: kiyoharu_shirakawa@po.fujisawa.co.jp


要約: ゾルピデム(商品名マイスリー)は,フランスのサンテラボ社(現サノフィ・サンテラボ社)で開発された非ベンゾジアゼピン構造(イミダゾピリジン誘導体)を有する超短時間型睡眠薬である.本剤は,従来のベンゾジアゼピン系薬剤とは異なり,GABAA受容体のサブタイプであるω受容体(ベンゾジアゼピン1受容体)に選択的に作用することにより,催眠鎮静作用に比べて,抗不安作用,抗けいれん作用,筋弛緩作用などが弱いという特徴を有している.一般に,ゾルピデムはベンゾジアゼピン系薬剤と同等の有効性を示すとともに,翌日への持越し効果は少なく,長期投与における耐性や中断後の反跳性不眠が少ないという臨床的特性を有している.また,睡眠ポリグラフィーによる検討において,ゾルピデムは,従来のベンゾジアゼピン系薬剤とは異なり,睡眠の質を変化させない,すなわち生理的な睡眠に近い睡眠パターンを形成することが示されている.以上,ゾルピデムはユニークな薬理学的特性を有し,従来のベンゾジアゼピン系薬剤の副作用の軽減が期待される新しいタイプの睡眠薬である.

キーワード: 酒石酸ゾルピデム(マイスリー(R)錠),睡眠薬,ω受容体選択性,非ベンゾジアゼピン構造

日本薬理学雑誌のページへ戻る