日薬理誌 119 (5), 295-300 (2002)


精神疾患における中枢ニコチン受容体の関与

末丸 克矢,荒木 博陽,五味田 裕

岡山大学医学部附属病院薬剤部
〒700‐8558 岡山市鹿田町2‐5‐1
e‐mail: suemaru@cc.okayama‐u.ac.jp


要約: 神経性ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は,αサブユニットとβサブユニットから構成される5量体のイオンチャネル型受容体であり,多くの神経伝達物質の放出を促進することによって精神機能にさまざまな影響を及ぼす.従来より,喫煙と各種精神病疾患の関係について多くの調査や研究が行われ,精神分裂病,うつ病および不安などの精神病疾患と喫煙の間に正の関連性があることが示されている.その喫煙動因として,ニコチンの中枢刺激作用により精神疾患の症状を自ら改善しようとする試み(self‐medication),またはニコチン退薬症候に伴う症状の悪化をニコチン再摂取により軽減させていることが考えられている.近年,nAChRサブユニットのノックアウトマウスや各種精神疾患の動物モデルを用いて神経性nAChRの精神薬理作用の解明が進み,精神分裂病の注意障害や情報処理障害にはα7 nAChRが,またニコチン依存および退薬症候にはα4β2 nAChRが関与していることが示唆されている.

キーワード: ニコチン受容体,喫煙,精神分裂病,不安,うつ病

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