日薬理誌 120 (1), 32-38 (2002)


IL‐15の粘膜免疫と炎症へのかかわり

幸  義和1),大田 典之2),廣井 隆親2),清野  宏1),2)


1)東京大学医科学研究所 炎症免疫分野
〒108‐8639 東京都港区白金台4‐6‐1
2)大阪大学微生物病研究所 免疫化学分野
〒565‐0871 吹田市山田丘3‐1


要約: 最近,IL‐15は粘膜免疫関連サイトカインとして注目されている.そこで本総説では,最初に,IL‐15は粘膜免疫のIgA免疫応答の制御において重要なサイトカインである証拠を示す.腸管のB‐1細胞にはIL‐15レセプターが優先的に発現している.加えてIL‐15は2つの異なった状態(sIgM sIgA and sIgM sIgA)にあるIgA免疫応答誘導循環帰巣経路独立型のB‐1細胞に働くのに対して,IL‐5はsIgM sIgAの状態のB‐1細胞にのみ働く.一方,循環帰巣経路依存型のB‐2細胞はIL‐5とIL‐6のレセプターを発現しておりIL‐5とIL‐6の作用でIgA産生細胞に分化する.次に,我々はマウスの腸管上皮細胞特異的にIL‐15を強制発現させることによって小腸炎症モデルを確立した例を示す.このIL‐15トランスジェニックマウスの中でIL‐15によって誘導されたCD8αβ NK1.1細胞は小腸炎症の発症に重要である.さらにこのT細胞はTh1タイプのサイトカインを産生しており,このT細胞の選択的な増加はIL‐15の抗アポトーシス活性に帰するのであろう.これらの結果は,IL‐15は粘膜免疫のIgA免疫応答に重要なサイトカインであるが,その腸管免疫での制御異常が生体に不利な効果を与えることを示唆している.


キーワード:
IL‐15,IgA免疫応答,B‐1細胞,クローン病,NKT細胞

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