小腸の自己免疫機構:クローン病の病態とサイトカイン
金井 隆典1),渡辺 守1),日比 紀文2)
1)東京医科歯科大学消化・代謝内科学教室
〒113‐8519 東京都文京区湯島1‐5‐45
2)慶応義塾大学医学部内科学教室
〒160‐8582 東京都新宿区信濃町35
要約: 最近,潰瘍性大腸炎とクローン病の分子免疫学的な病態メカニズムが徐々に明らかにされるにつれ,従来の治療法とは異なった,より病態に特異的な治療法,サイトカインや免疫担当細胞に着目した治療法が開発,研究されるようになった.特に,抗TNF抗体によるクローン病治療に代表されるように,実際の臨床現場に応用され,優れた成績が報告されつつある.潰瘍性大腸炎とクローン病といった生涯にわたり治療を余儀なくされる疾患に対して,副作用が問題となる長期副腎皮質ステロイド投与に替わる,より効果的な治療法の開発は本病が若年で発症することを考え合わせ,社会的にも重要な問題である.免疫学の進歩の恩恵を受け,数年後の炎症性腸疾患治療は従来とは全く異なった新たな局面からの治療法が開発されることも考えられている.本稿では,現在までに明らかとされた炎症性腸疾患の免疫学的病態と,サイトカインに関連した知見に基づいた治療法の開発状況について概説した.
キーワード: 炎症性症疾患クローン病,サイトカイン療法,TNF,IL‐12,IL‐18
日本薬理学雑誌のページへ戻る