日薬理誌 120 (1), 47-54 (2002)


オピオイド受容体ノックアウトマウスの作製・解析の概要

曽良 一郎1),2),池田 和隆2),三品 裕司3)

1)東北大学大学院医学系研究科神経科学講座精神神経生物学分野
〒980‐8574 宮城県仙台市青葉区星陵町1番1号
2)財団法人東京都医学研究機構・東京都精神医学総合研究所分子精神医学研究部門
〒156‐8585 東京都世田谷区上北沢2‐1‐8
3)Molecular Developmental Biology Group, Laboratory of Reproductive and Developmental Toxicology, National Institute of Environmental Health Sciences/NIH
111 T.W. Alexander Drive, P. O. Box 12233 Bldg. 101, Room C458A, MD C4‐10 Research Triangle Park, NC 27709 USA

要約: オピオイド系の分子メカニズムの研究は,遺伝子ノックアウト動物モデルを利用することにより,作動薬,拮抗薬などを用いるだけでは為し得ない解析が可能となった.遺伝子ノックアウトマウス作製は,分子遺伝学,細胞培養,発生工学の実験手技の集大成であり,長期にわたる労働集約的な実験作業を要するプロジェクトである.ターゲティングベクター作製のためのゲノムDNAの入手から始まり,ES細胞への遺伝子導入,キメラマウス作製の後に,はじめてノックアウトマウスを得ることができる.また,表現型を行動学的,解剖学的,生化学的に解析する際に,ノックアウトマウスであるが故の留意点もある.本稿では,新規のみならず既知のノックアウトマウスの解析を予定されている研究者も対象に,概略的知識および成功を左右するいくつかのコツを,筆者らの経験をもとに紹介する.

キーワード:
相同遺伝子組み換え,ES細胞,ターゲティングベクター,キメラマウス,表現型解析

日本薬理学雑誌のページへ戻る