日薬理誌 120 (3), 149-158 (2002)


低分子量GTP結合タンパク質Rhoと循環器疾患

河野 洋治,吉村  武,貝淵 弘三

名古屋大学大学院医学系研究科 細胞情報薬理学講座
〒466‐8550 名古屋市昭和区鶴舞町65番地
e‐mail: kaibuchi@med.nagoya‐u.ac.jp


要約: 従来,血管平滑筋収縮の制御機構は細胞内Ca2+濃度の上昇によるミオシン軽鎖のリン酸化で説明されてきた.ある種の病態やアゴニスト刺激時においては,細胞内Ca2+濃度とミオシン軽鎖のリン酸化レベルおよび発生張力は必ずしも一致せず,Ca2+濃度以外にも血管平滑筋収縮を制御するメカニズムが存在すると考えられていたがその分子メカニズムは不明であった.低分子量GTP結合タンパク質Rhoは種々の標的タンパク質を介して,細胞骨格や接着,細胞運動,平滑筋収縮を制御する.近年,Rhoおよびその標的タンパク質Rho‐キナーゼ(Rho‐kinase/ROK/ROCK)が細胞内Ca2+濃度に依存しない血管平滑筋の収縮機構に関与することが明らかになってきた.この新しい収縮機構が,ある種の高血圧や冠動脈攣縮などの循環器疾患の病態に関与していることが判明してきた.Rho‐キナーゼの阻害薬などを用いた解析から,Rho‐キナーゼが血管平滑筋の異常収縮を伴う疾患のみならず,動脈硬化や多臓器の保護作用創薬ターゲットとしてますます重要になってきた.


キーワード: Rho,Rho‐キナーゼ,ミオシン結合サブユニット(myosin‐binding subunit: MBS),循環器疾患Rho‐キナーゼ阻害薬

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