日薬理誌 120 (3), 195-204 (2002)


低カルシウム・低マグネシウム飼料飼育ラットの骨量,骨強度および軟部組織中カルシウム量の変化に対するビタミンK2(メナテトレノン)の効果

小林 正敏,原 久仁子,秋山 康博


エーザイ株式会社 薬物応用研究部
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要約: 7週齢Wistar系ラットを用いて低カルシウム(Ca)および低マグネシウム(Mg)飼料飼育による骨量および骨強度の変化とビタミンK2(V.K2)の効果を検討するため2つの実験を行った.実験1では低Ca(0.01%)および種々のMg濃度(0.09,0.015,0.003%)飼料4週間飼育後の変化を観察した.いずれのMg濃度群においてもIntact群(Ca 0.5%,Mg 0.09%)に比し,大腿骨骨幹部の骨密度は85%,最大点荷重は50%に低下し,飼料中Mg濃度低下の影響は認められなかった.一方,飼料中Mg濃度の低下に対応して大腿骨弾性率,骨中Mg量は低下し腎組織中Ca量は増加した.すなわち大腿骨の弾性率および異所性石灰化は飼料中Mg濃度の影響を受けることが明らかになった.実験2では,低Ca(0.01%)・低Mg(0.003%)飼育モデルを用いて飼育8週後の病態に対するV.K2の作用を検討した.低Ca・低Mg飼料飼育により血中および大腿骨中Ca,Mg濃度は低下し,血中PTH濃度,オステオカルシン量および尿中デオキシピリジノリン量は増加した.すなわち,骨の代謝回転が亢進した病態であることが示唆された.また低Ca・低Mg飼料飼育により大腿骨骨端部骨密度および骨幹部骨密度,骨面積,皮質骨幅,最大点荷重は低下し,腎組織中Ca量は増加した.V.K2投与群では低Ca・低Mg飼料飼育対照群に比し血中Ca,Mg濃度は高値を,PTH,腎組織中Ca量は低値を,大腿骨骨密度,骨強度は高値を示した.すなわちV.K2はこのモデルでの骨強度の低下および軟部組織の石灰化に対し改善作用を有することが示唆された.


キーワード: マグネシウム,カルシウム,骨密度,骨強度,ビタミンK2

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