日薬理誌 120 (4), 222-228 (2002)


創薬としての遺伝子治療

森下 竜一

大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学
〒565‐0871 吹田市山田丘2‐2
e‐mail: morishit@geriat.med.osaka‐u.ac.jp


要約: 遺伝子治療が臨床の場に現れて,10年の歳月が過ぎた.単一性遺伝子疾患に始まり,HIVなどの感染症,がんへの治療へと移り,近年では循環器疾患を含む生活習慣病にまで適応されるに至った.アメリカでは,多くの臨床試験が大学・公的研究機関はもちろんバイオベンチャーをスポンサーとして実施されてきた.未だ医薬品として発売された製品は存在しないが,既に臨床試験第3相が実施されているものもあり,2004年には第一号の遺伝子治療医薬品の発売が期待されている.これらの技術は,21世紀の先端医療の中でも中心的医療技術となることは疑う余地はない.遺伝子治療は,ゲノム創薬の代表例であり,医薬品化に適したモデルであり,多くの画期的な新規薬剤をもたらすであろう.日本においても,遺伝子治療ベンチャーが出現し,期待されている.世界に通じる遺伝子治療医薬品の育成に最も大切なことは,ハードルとなっている多くの関連法律・規制の改革整備が早急に行われる事とチャレンジ精神を持った人材(研究者)の育成である.我が国にも早くアメリカ型遺伝子治療医薬品が育つことを期待する.


キーワード: 遺伝子治療,血管新生,HGF,VEGF,心筋梗塞

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