は じ め に

 薬物活性シンポジウムは、生体機能の異常に基く疾患と薬物作用のメカニズムを解明し、これを新しい薬の開発に結びつけようという目的で、薬学部、医学部さらに製薬企業その他の研究機関の薬理学関係者が中心となって発足した学術集会であると伺っております。今年は、30回目の節目のシンポジウムを、ここ福岡の地で開催することになりましたことを大変光栄に存じております。
 最近の細胞内シグナル研究の目覚ましい発展が、創薬への新たな展開に結びつくことを期待し、今回のシンポジウムのメインテーマを「細胞メカニズムの解明から創薬へ」と致しました。特別講演4題、教育講演1題では、いずれもこの分野で、国際的にご活躍されている一流の先生方にお話願うことが出来ました。また、急激な高齢化社会を迎えつつある現在、大変注目を集めているテーマとして「痴呆治療戦略の最前線」をシンポジウム1でとり上げ、今後の医療に革命をもたらすことが期待されている遺伝子技術の話題を「ゲノム創薬に向けた新たな展開」としてシンポジウム2でまとめて頂きました。さらに「新生理活性物質」に関する25題の一般口演をご発表願いました。クローニング技術や臓器再生技術など21世紀の科学技術のレベルは凄まじい勢いで進化しつつありますが、これを人類がいかに適正に制御出来るかに関して、私共研究の現場に携る者の社会的責任は非常に大きいものと思われます。従って、個々の研究者が生命科学全般を冷静に見渡せる視点をもつことが大切であり、その意味でも毎年テーマが変わり、常に豊富な話題を盛り込んだ本シンポジウムのもつ役割の重要性について、改めて認識させられた次第です。
 最後にここでの成果が何らかの形で、今後の創薬科学の進歩、発展に寄与することを祈念しつつ、本シンポジウムの開催に対して、ご協力、ご支援頂いた先生方、また、ご援助下さった各社の関係各位に心より感謝申し上げます。
                    
第30回薬物活性シンポジウム会長
福岡大学医学部薬理学教室
桂木 猛

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