新現Na+/Ca2+交換機構阻害薬KB-R7943の心筋虚血・再潅流障害に対する作用
中村 亜紀，原田 研吾，杉本 寿了，中島 史雄，西村 宣泰
鐘紡(株)薬品探索研究所
〒534 大阪府大阪市都島区友渕町1-5-90
要約: イヌ心筋小胞膜標本を用いて，KB-R7943(2-[2-[4-(4-nitrobenzyloxy)phenyl]ehyl]isothiourea
methanesulfonate)の主要な心筋イオン輸送機構に対する作用を検討した．KB-R7943
(3 - 30 microM)はNa+/Ca2+交換機構に対して濃度依存的な阻害作用を示し, IC50値は5.5
microMであったが, Na+/H+交換機構, Na+/K+-ATPaseおよびCa2+-ATPaseに対しては3O
microMまでほとんど作用を示さなかった．ついで，摘出ラット潅流心臓標本を用いて,
KB-R7943の心筋虚血・再潅流障害に対する作用を虚血前処置あるいは虚血後処置により検討し,
ジルチアゼムおよびリドカインの作用と比較した．虚血(25分)・再潅流(30分)により低下した最大左心室圧(LVDP)および左心室庄一次微分値(LVdP/dtmax)の回復に対して,
KB-R7943 (1, 10 microM ) は虚血前処置 (5分) により有意かつ濃度依存的に改善し,
左心室拡張終期圧(LVEDP) の上昇を有意に抑制した．KB-R7943 (10 microM) の虚血後処置
(10分) によってもほぼ同等の効果が認められた．一方，ジルチアゼム (10 microM)
およびリドカイン (100 microM) は虚血前処置により虚血・再潅流後のLVDPおよびLVdP/dtmax
の回復を有意に改善し，LVEDPの上昇を有意に抑制したが, 虚血後処置によってはこれらの作用は認められなかった．さらに,
麻酔ラットを用いて，KB-R7943の心筋虚血(5分)・再潅流(10分)不整脈に対する作用を静脈内投与により検討した．KB-R7943
(1,10 mg/kg) は用量依存的に心室細動の発現率を低下させ，持続時間を短縮させた.
以上の結果より，KB-R7943は選択的なNa+/Ca2+交換機構阻害薬であり,
心筋虚血・再潅流障害に対して抑制作用を示すことが明らかになり，さらに心筋虚血・再潅流障害発症機構において，
Na+/Ca2+交換機構の活性化が主として再潅流直後に関与していることが推察された．
キーワード: Na+/Ca2+交換機構阻害薬, KB-R7943,
心筋保護作用, ラット, 心筋虚血・再灌流障害
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