日薬理誌 111 (2), 117-125 (1998)


エタノール誘発行動障害および致死・肝毒性に対する肝臓水解物の効果

鷲塚 昌隆,平賀 義裕,古市 浩康,泉  順吉,吉長 幸嗣,阿部  亨,田中 芳明,玉木  元

ゼリア新薬工業(株)中央研究所
〒360-01 埼玉県大里郡江南町押切2512-1


要約: 今回我々は, エタノールによるマウスの行動障害に対し,酵素阻害薬を用いてエタノールおよびアセトアルデヒドの関与と, 蛋白加水解物である肝臓水解物の作用について検討した.さらに,エタノールあるいはアセトアルデヒドによるマウスの致死毒性およびラットの肝毒性に対する肝臓水解物の作用について検討し,以下のような結果を見いだした.1 : エタノール5 ml/kgの経口投与によって歩行および摂食に対する障害が認められた.2 : これらの障害に対して,肝臓水解物は経口投与により用量依存的な改善作用を示した.3 : アルコール脱水素酵素阻害剤の前投与によって肝臓水解物の改善作用に明らかな減弱が認められたが, アルデヒド脱水素酵素阻書剤の前投与では肝臓水解物の改善作用に影響は認められなかった.4 : エタノール10 ml/kgを経口投与した時に生じる正向反射の消失および死亡に対し,肝臓水解物は改善作用を示さなかった.一方, アセトアルデヒド1.8 ml/kgを経口投与した時に生じる正向反射の消失および死亡に対し, 肝臓水解物は用量依存的な改善作用を示した.5 : アセトアルデヒド1.2 ml/kgを1時間間隔で2回経口投与した時に認められる血清中のGPT活性の上昇に対し, 肝臓水解物は抑制作用を示した.以上の緒果から, 肝臓水解物はエタノールにより引き起こされる毒性症状に対して改善作用を有し,これらの改善作用は主にアセトアルデヒドの毒性軽減に起因することが示唆された.


キーワード: エタノール, アセトアルデヒド, 肝臓水解物, アルコール脱水素酵素阻害薬, アルデヒド脱水素酵素阻害薬

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