日薬理誌 111 (5), 309-316 (1998)


ラット海馬スライスにおけるSpreading depressionに対する新規カルシウム桔抗薬KB-2796の作用

高木 啓,高嶋 瑞夫,劉 世玉

ファルマシア・アップジョン(株) 筑波総合研究所 前臨床研究部 薬理研究グループ
〒300-42 茨城県つくば市和台23

要約: KB-2796は新規なカルシウム拮抗薬であり,抗片頭痛薬として開発中の化合物である.本研究では海馬切片を用いin vitroでのspreading depression (SD) に対するKB-2796の効果を,フルナリジン,ジメトチアジン,スマトリプタンの効果と比較検討した.ラット海馬CA1領域からフィールド電位を記録し,40 - 65 秒間の低酸素負荷によりSDを誘発した後,自発性のSD発現を記録した.低酸素負荷開始からSD誘発までの時間を潜時,誘発性SDから自発性SD発現までの時間をインタバルとして測定したところ,KB-2796(10-10 - 10-8 M)は電位変化量に影響せずに,濃度依存的に潜時とインタバルを延長し,その効果はフルナリジンよりもそれぞれ1000倍,10倍低濃度で発現した.一方,ジメトチアジン,スマトリプタン(10-7 - 10-6 M)では作用は見られなかった.KB-2796のSDに対する作用は主にカルシウム拮抗作用によるものと考えられる.

キーワード: KB-2796,spreading depression,ラット,海馬

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