トリニトロベンゼンスルフォン酸および酢酸誘発ラット大腸炎モデル
におけるプラウノトールの効果
牧野 光子 (1), 猪俣 由香 (1), 伊藤 圭一 (I), 田端 敬一 (2)
三共(株)第一生物研究所 (1), ライセンス部 (2)
(1) 〒140 東京都品川区広町1-2-58
(2) 〒103 東京都中央区日本橋本町3-5-1
要約: トリニトロベンゼンスルフォン酸 (TNB) あるいは酢酸の経直腸的投与により誘発させたラット大腸炎
モデルに対するプラウノトールの効果について検討した.TNB誘発大腸炎はラットにTNB (20 mg/0.25 ml/rat)・エタノール溶液をシリコンゾンデを用いて肛門部より注入することにより作成し,プラウノトールは大腸炎作成後6 日間にわたって投与した.プラウノトールはTNBによって誘発される大腸の損傷面積を用量依存的に抑制し,特に600 mg/kg/day の用量では有意な抑制作用を認めた.この効果は対照薬のスルファサラジン (600 mg/kg/day) と同程度のものであった.また.TNBの投与により大腸粘膜中の myeloperoxidase (MPO) 活性は正常ラットに比し著明に上昇するが,プラウノトール (600 mg/kg/day) はこのMPO活性の
上昇を有意に抑制した.次に,5% 酢酸 (1 ml/rat) を直腸に注入し大腸炎を惹起させ,薬剤を2日間投与した.酢酸の注入によって大腸粘膜には広範囲に出血を伴う粘膜損傷が認められたが,プラウノトールはこの肉眼的な大腸の損傷を用量依存的に抑制し,60,
200および600 mg/kg/dayの用量で有意な作用を示した.この抑制作用はスルファサラジン600
mg/kg/dayよりも強力であった.酢酸の投与は組織学的にも浮腫,出血,粘液の減少および炎症性細胞の著しい浸潤を伴う大腸粘膜の損傷を引き起こしたが,これらの変化はプラウノトールを投与したラットでは軽度であった.以上の結果より,プラウノトールは
TNB および酢酸誘発大腸炎モデルにおいて大腸に誘発される損傷の発生を用量依存的かつ有意に抑制することが明らかとなり,プラウノトールが潰瘍性大腸炎あるいはクローン病のような炎症性腸疾患に有用であることが実験的に証明されたものと考えられる.
キーワード: トリニトロベンゼンスルフォン酸,酢酸,ラット,大腸炎,プラウノトール
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