日薬理誌 112 (4), 257-266 (1998)


片側黒質破壊ラットにおける回転行動でみた抗パーキンソン病薬

タリペキソールとブロモクリプチンの作用特性

廣中 直行 (1,3),河野 康子 (2),柳田 知司 (1)


(株)前臨床医学研究所 (1),日本べーリンガーインゲルハイム(株)営業本部学術部 (2)

理化学研究所 脳科学総合研究センター情動機構研究チーム (3)
(1) 〒216-0001 神奈川県川崎市宮前区野川1433
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要約: 抗パーキンソン病薬タリペキールとブロモクリプチンの線条体シナプス後膜ドパミン受容体に対する刺激作用特性を検討する目的で,片側黒質に6-OHDA (8 microg/rat)を注入して黒質-線条体ドパミン神経を破壊したラットを用い,それぞれの薬物で惹起される健常側への回転行動を観察した.皮下投与後6時間の観察では,タリペキールは0.16 mg/kgで,ブロモクリプチンは10.24 mg/kgで有意な回転行動を誘発した.作用の発現はタリペキールでは投与30分後より, ブロモクリプチンでは90分後より認められた.経口投与では,タリペキールは0.4 mg/kgで,ブロモクリプチンは20.48 mg/kgで有意な回転行動を誘発した.作用の発現はタリペキールでは投与60分後より認められたのに対し,ブロモクリプチンでは用量により発現時間が大きく異なった.タリペキールによる回転行動は,スルピリド(40 mg/kg,皮下投与)で抑制されたが,SCH23390 (1 mg/kg,皮下投与)では抑制されなかった.一方,ブロモクリプチンによる回転行動は両者で抑制された.以上の結果より,黒質線条体ドパミン神経機能低下時に,タリペキールは皮下投与でも経口投与でもブロモクリプチンよりも低用量で一定時間内に線条体シナプス後膜ドパミン受容体を刺激すること,ブロモクリプチンの刺激作用がドパミンD1およびD2両受容体を介するのに対し,タリペキールの刺激作用はD2受容体のみを介することが示された.

キーワード: タリペキール,ブロモクリプチン,ドパミン,回転行動,線条体

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