土井 康子,森 由紀夫,浦田 紀子,水尾 美登利, 庄司 美保子,丸淵 茂樹,荒井 博敏
富山化学工業(株)綜合研究所
〒930-8508 富山県富山市下奥井2丁目4の1
要約: ラット低温焼灼胃潰瘍モデルを用いて新規抗潰瘍薬T-593の潰瘍部位における組織修復に及ぼす影響をファモチジンと比較検討した.実体顕微鏡による評価では,T-593は30
mg/kgの1日2回経口投与により潰瘍の治癒を有意に促進し,投与開始2,4および8週目における潰瘍の縮小率は同投与量のファモチジンとほぼ同程度であった.組織学的評価では,新生血管に対してファモチジンは作用を示さなかったが,T-593は投与2週目に新生血管数の有意な増加を,投与8週目に有意な減少を示した.また,炎症性細胞浸潤に対してファモチジンは投与4週目に浸潤の程度を有意に軽減したが,投与2および8週目には明らかな軽減を示さなかった.一方,T-593は投与2および4週目に炎症性細胞浸潤の程度を有意に軽減し,投与8週目には軽減傾向を示した.さらに,潰瘍が瘢痕化した例について,組織の修復度を比較するため,再生粘膜の厚み,腺管の配列と密度,粘膜下組織中の新生血管数および炎症性細胞浸潤の程度について検討した.ファモチジンは各項目に対して有意な差を示さなかったが,T-593は均一な厚さの再生粘膜を形成するとともに粘膜下組織中の新生血管数を減少させ,炎症性細胞浸潤の消退を有意に促進した.以上の結果より,T-593は潰瘍の治癒過程で再生粘膜および粘膜下組織の修復を促進し,良質な瘢痕を形成すると考えられた.
キーワード: T-593,抗潰瘍薬,低温焼灼胃潰瘍,組織学的評価,潰瘍治癒の質(QOUH)
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