日薬理誌 113 (3), 177-184 (1999)


新規シート状フィブリン接着剤TO−193の実験的創傷モデルにおける止血効果

上田 順久,前川 祐理子,大谷 尚也,内山 浩之,柏原 早苗,越山 良子,織田 実,来海 正輝

鳥居薬品(株)研究所

〒267-0056 千葉市緑区大野台1-2-1

要約: TO-193(TachoComb(R))は,フィブリン接着剤と支持体であるコラーゲンシートを組み合わせた新しいタイプのシート状フィブリン接着剤である.TO-193の止血効果について,種々の実験モデルを用い,フィブリン接着剤であるBeriplast(R) P,微線維性コラーゲン止血剤であるAvitene(R)およびNovacol(R)ならびにTO-193の支持体であるスポンジ状コラーゲンシートと比較検討した.血液が綿布より漏出するin vitro出血モデルにおいて,TO-193はBeriplast(R) P,Avitene(R),Novacol(R)およびスポンジ状コラーゲンシートに比較し有意に強い耐圧力を示し,血液漏出面への強い接着力を有する可能性が示唆された.ラットの腎部分切除創において,TO-193はBeriplast(R) Pおよびスポンジ状コラーゲンシートより有意に強い耐圧力を示し,生体において十分に止血効果を発揮し得るものと推察された.さらに,ラットの肝部分切除創において,TO-193は正常動物での出血量をNovacol(R)に比較し有意に減少させ, 凝固能低下動物での出血量をNovacol(R)と同等にあるいはBeriplast(R) Pの約1/2に減少させた.これらの結果から,TO-193は出血創面に対して強い接着力を示し,正常状態のみならず,血液凝固能が低下した状態においても確実に止血することが可能であることが示唆され,臨床における有用性が期待された.

キーワード: TO-193, TachoComb, フィブリン接着剤, 止血効果, 止血剤

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