日薬理誌 113 (4), 211-218 (1999)


鼻粘膜微小循環

渡部 浩 (1),水流 弘通 (2)

(1) 中国労災病院耳鼻咽喉科
〒737-0193 広島県呉市広多賀谷1-5-1
(2) 東邦大学医学部薬理学教室
〒143-8540 東京都大田区大森西5-21-16

要約: 鼻腔は呼吸器の最前線に位置しており外界の影響を最も強く受ける。そのため生体防御機構上重要な役割を与えられており、吸気の加温、加湿、異物除去等の生理機能を担っている。鼻粘膜血管には容積血管としての洞様血管があり大量の血液を貯え、鼻粘膜微小循環の変化は主に鼻粘膜の収縮・腫脹として発現する。鼻粘膜血管には自律神経系の交感神経線維、副交感神経線維および知覚神経線維が分布している。交感神経にはnorepinephrine(NE)、neuropeptide Y(NPY)、adenosine 5'-triphosphate (ATP)が、副交感神経にはacetylcholine(ACh)、vasoactive intestinal polypeptide (VIP)、一酸化窒素(NO)が、知覚神経にはsubstance P(SP)、calcitonin gene-related peptide(CGRP)、neurokinin(NK)などが主な神経伝達物質として存在する。それらのバランスの上で鼻粘膜微小循環の生理機能が保たれ、環境変化、病的状態においてもこれらの神経系が深く関与している。また、血管内皮細胞に由来する血管拡張因子としてNO、強力な血管収縮因子としてendothelin(ET)が知られているが、鼻粘膜血管においてもそれぞれの作用が確認されている。炎症時に放出されるケミカルメディエーターであヒスタミン、 leukotriene(LT)、bradykinin(BK)などには鼻粘膜血管拡張作用が認められ、その多くは鼻粘膜血管内皮由来のNOを介する反応である。これらの反応が絡み合って、鼻粘膜微小循環の生理機能、病態時の反応が形成されている。

キーワード: 鼻粘膜血管、自律神経、神経伝達物質、ケミカルメディエーター、鼻閉

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