日薬理誌 113 (4), 227-234 (1999)


心臓微小循環

市原 和夫,佐藤 久美

北海道薬科大学薬理学教室
〒047-0264 小樽市桂岡町7-1

要約: 心筋組織は,冠循環によって酸素と養分に富んだ動脈血によって養われ,心筋収縮のためのエネルギーを好気的に得ている。左冠動脈前下行枝および回旋枝は,左心室心外膜表面を走行し,途中直角に心筋内膜下層に向かって走行して内膜下層心筋部位に微小血管として分布する。この冠血流が途絶えると心筋組織に虚血が生じる。特に心筋内膜下層は,心筋に対して直角に走行する冠血管が周囲の心筋が収縮する度に圧迫されるため,常に虚血になる危険に曝されている。狭心症の治療薬として,現在でもまだ冠血管拡張薬が使用されている。しかし,強力な冠血管拡張薬は,冠盗流現象を起こし,虚血心筋障害をかえって悪化させる可能性がある。筆者らは冠血管拡張薬により生ずる虚血心筋の微小循環における血流変化について述べ,虚血心筋に冠血管拡張薬が常に効果的であるわけではないことを述べる。

キーワード:冠血管拡張薬, 虚血心筋, 冠盗流現象

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