日薬理誌 113 (4), 249-259 (1999)


腸間膜微小循環の神経性調節

竹永 誠(1), 川崎博己 (2)

(1) 宮崎循環器病院
〒880-0941 宮崎市北川内町乱橋3584番地1
(2) 岡山大学大学院薬学研究科臨床薬学講座

〒700-8530 岡山市津島中1-1-1


要約: 全身の血管床の中で腸間膜血管系は最も大きな血管床のひとつであり、全身循環への関与も大きい。腸間膜微小循環の調節には、血管支配神経による末梢血管(小動脈から細動脈)抵抗の神経性調節が重要な役割を果たしている。腸間膜動脈にはノルアドレナリンを伝達物質とするアドレナリン作動性交感神経および非アドレナリン・非コリン性神経が血管支配神経として分布している。また、僅かであるがコリン作動性副交感神経も関与している可能性がある。交感神経は伝達物質ノルアドレナリンの他にドパミン、ニューロペプチドY、アデノシン三リン酸(ATP)、セロトニンをcotransmitterとし、血管緊張維持に中心的な役割を果たしている。また、非アドレナリン・非コリン性神経も緊張調節系として関与し、その主な神経伝達物質であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介して交感神経系とともに相反的支配を行っていると考えられる。これら多くの神経のうち、ノルアドレナリン作動性、ニューロペプチドY作動性、ATP作動性の各神経は血管収縮性神経として、ドパミン作動性、コリン作動性、CGRP作動性の各神経が血管拡張性神経として調節に関与している。以上の様に腸間膜循環系の神経性調節は、交感神経を中心に行われ、これに各神経の相互作用、シナプス前フィードバック機構、血管作動因子による修飾などが加わってより複雑に連携して行われている。これらの調節機構の障害は高血圧等の循環器疾患の成因となる可能性が考えられる。

キーワード: 腸間膜動脈、神経性調節、交感神経、副交感神経、非アドレナリン・非コリン性神経

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