日薬理誌 113 (5), 317-326 (1999)


塩酸ベニジピンの高血圧自然発症ラットの血圧・心拍数

および血漿中ノルエピネフリン濃度に及ぼす影響

唐沢 啓,野村博子,二藤眞明,園田理恵,田中秀幸,小坂信夫,山口和夫,

小林 智

協和発酵工業株式会社 医薬総合研究所
〒411−8731 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188

要約: 高血圧自然発症ラットを用いて,血圧・心拍数および血漿中ノルエピネフリン
(NE)濃度に及ぼす塩酸ベニジピン(コニール(R))および他のカルシウム(Ca2+
拮抗薬の影響を検討した.血圧・心拍数の測定はテレメトリー法で行ない,血漿中
NEは蛍光誘導体をHPLCにて測定した.塩酸ベニジピン 2 mg/kg (po)および本薬と
同程度の降圧活性を示す用量のニフェジピン(5 mg/kg),シルニジピン(6
mg/kg)およびアムロジピン(3 mg/kg)の作用を比較検討した.何れの4薬物と
もに有意な降圧作用を発現した.この時,ニフェジピンおよびシルニジピンは対照と
比べて心拍数を有意に上昇させたが,塩酸ベニジピンとアムロジピンは心拍数に有意
な影響を及ぼさなかった.また,薬物投与後10時間までの作用下面積(AUC)で比
較すると,塩酸ベニジピンの心拍数増加作用は,他の3剤に比べて有意に低値を示し
た.ニフェジピンおよびアムロジピンは血漿中NE濃度を有意に上昇させ,シルニジ
ピンは上昇させる傾向を示したが,塩酸ベニジピンは血漿中NEに有意な影響を及ぼ
さなかった.以上の結果より,塩酸ベニジピンは血漿中NE濃度および心拍数に及ぼ
す影響が他剤に比べて軽微なCa2+拮抗薬であることが示唆された.

キーワード: 塩酸ベニジピン,カルシウム拮抗薬,高血圧自然発症ラット,血中ノルエピネフリン,血圧

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