日薬理誌 113 (6), 331-338 (1999)


ロサルタンの薬理学的特徴と臨床における有用性

太田 尚 (1)、里見 透 (2)、鈴木 順 (1)、池本 文彦 (3)、錦辺 優 (1)


萬有製薬(株)つくば研究所・薬理研究所 (1), 学術部 (2), 開発研究所 (3)
〒300−2611 茨城県つくば市大久保3

要約: ロサルタンはAT1 アンジオテンシン(AII) 受容体拮抗薬という新しいクラスの降圧薬である。ロサルタンは経口投与後速やかに吸収され、代謝されたカルボン酸体(E3174)とともにAT1受容体を遮断することにより、血管平滑筋では収縮反応を抑制、副腎皮質ではアルドステロン分泌の抑制等を起こし、降圧作用が発現すると考えられる。また、ロサルタンはAII刺激による細胞の増殖と成長を抑制することから臓器保護作用をもつことも考えられる。最近、ロサルタンには他のAII受容体拮抗薬には無い固有の作用としてTXA2受容体抑制作用や尿酸排泄促進作用を有していることが報告されている。 高血圧ばかりでなく心不全の臨床試験においても、ロサルタンはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)と同等以上の延命効果を示し、ACEIと異なり、空咳や浮腫などの副作用が少なく、忍容性の高い治療薬であることが示されている。また、腎症の発症予防についても、ロサルタンの効果が期待される。AT1受容体を選択的に遮断するロサルタンの効果がACEIとヒトにおいてどのように異なるか、現在実施されている大規模比較臨床試験により明らかになるものと期待される。

キーワード: ロサルタン、アンジオテンシンII受容体、高血圧、心不全、レニン-アンジオテンシン系

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