シグマ受容体と神経ステロイド
植田弘師、吉田 明
長崎大学薬学部分子薬理学教室
〒852-8521 長崎市文教町1-14
要約: 1976年にシグマ受容体はオピオイド受容体のファミリーに属するものとして明らかにされたが、その後分類のいきさつや生理機能が充分解明されなかった為、あまり注目されてこなかった。ところが最近、シグマ1受容体が学習記憶障害改善作用や抗うつ作用、さらには神経細胞保護作用など高次脳神経機能に関連していることが多数報告されるようになり選択的シグマ1受容体アゴニストが新しい治療薬として注目されるようになってきた。これと並行して、膜1回貫通型シグマリガンド結合タンパク質のアミノ酸配列が報告され、また一方で脳シナプス膜におけるGタンパク質連関型シグマ受容体存在の証明などを機にこれまで未知な点が多かったシグマ受容体研究が急速な発展を遂げつつある。さらに、神経ステロイドの即時型反応(non-genomic
action)にこのシグマ受容体が関連することが明らかになり、様々な行動薬理、神経化学的性質をシグマ化合物と共有することが明らかになってきた。神経ステロイドの血中濃度と高次脳機能との関連が報告されはじめ、今後、シグマ受容体関連化合物が神経ステロイド機能調整薬として応用されることが期待されるであろう。
キーワード: シグマ受容体、神経ステロイド、Gタンパク質連関型受容体、NMDA受容体、GABA受容体
日本薬理学雑誌のページへ戻る