新しい急性心不全治療薬塩酸コルホルシン ダロパートの心血管作用
細野 誠
日本化薬(株) 医薬事業本部 創薬本部
〒115-8588 東京都北区志茂3-31-12
要約: 塩酸コルホルシン ダロパートは、フォルスコリンの水溶性誘導体研究から見出された生薬由来の急性心不全治療薬である。本剤はフォルスコリンと同様に、beta受容体を介さずにcAMPの合成酵素であるアデニル酸シクラーゼを直接活性化し、細胞内のcAMP濃度を高めることにより薬理作用を発現する。本剤は水溶性、作用の持続時間、血液脳関門透過性、経口活性およびアデニル酸シクラーゼのサブタイプ選択性などの点でフォルスコリンとは異なる。本剤は、陽性変力作用と血管拡張作用を示すイノダイレーター(inodilator)である。本剤の陽性変力作用は、beta刺激薬やPDE阻害薬の作用が減弱するbeta受容体脱感作モデルでも保持された。また、本剤は各種実験的心不全モデルに対し改善作用を示した。臨床試験においても、本剤は心不全患者の血行動態を改善し、同時に自覚症状や身体所見の改善も認められた。さらに、カテコラミン抵抗性の心不全患者でも有効であった。本剤は、世界初のアデニル酸シクラーゼ賦活薬製剤である。今後市販後調査(PMS)の中で、さらにその有効性、安全性および品質などに関して情報収集し、より適正な使用法を確立していく必要がある。本剤の臨床的位置付けがさらに明確になり、急性心不全の治療薬として一翼を担うことができれば幸いである。
キーワード: 塩酸コルホルシン ダロパート,フォルスコリン,アデニル酸シクラーゼ,急性心不全,心血管作用
日本薬理学雑誌のページへ戻る