日薬理誌 114 (2), 89-106 (1999)


病態におけるヒスタミンH3受容体の役割とそのリガンドの神経精神薬理学的特質

小野寺憲治 1), 宮崎修一 2)

1) 東北大学歯学部薬理学教室
〒980-0872 仙台市青葉区星陵町4-1

2) ヤマサ醤油 (株)診断薬部・免疫研究室
〒288-0056 千葉県銚子市新生町2-10-1

要約: ヒスタミン受容体のなかで H3受容体はシナプス前膜に存在し,オートレセプターとしてヒスタミンの遊離を調節している.脳内では,大脳皮質,扁桃体,線条体,海馬,視床,視床下部において高密度に分布している.この総説では H3受容体に関する細胞情報伝達機構と,この受容体のアゴニストおよびアンタゴニストに関する構造活性相関,選択的で親和性の高い新規H3受容体リガンドの紹介ならびに,最近得られた精神疾患あるいは病態モデル (アルツハイマー病,attention deficit hyperactive disease,てんかん, ストレス,不安,パーキンソン病など) での薬理作用について概説する.これらの実験結果から,H3受容体アゴニストの中で BP2.94 は消炎鎮痛作用があり, また片頭痛への有効性が示唆され, 臨床段階に入っている.他方,H3受容体アンタゴニストの GT2016 や FUB181 は学習記憶障害,attention deficit hyperactive disease,てんかんへの応用が示唆され,臨床での成果が期待されている.

キーワード: ヒスタミン, ヒスタミン作動神経系, ヒスタミンH3受容体, ヒスタミンH3受容体作用薬, 神経精神疾患

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