日薬理誌 114 (2), 107-114 (1999)


生体フリーラジカル反応のin vivo検出

佐野 浩亮,内海 英雄

九州大学大学院薬学研究科機能分子解析学
〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1

要約: 生体内フリーラジカルが炎症,発癌,虚血性疾患,消化器疾患,神経変性を伴う脳神経疾患,薬物による臓器障害や老化など数多くの疾患や生体内の諸現象に重要な役割を演じていることがわかり,フリーラジカルの測定が非常に重要な地位を占めることになってきた.しかし,生体内フリーラジカルは反応性に富み寿命が短いため,その検出は困難である.Ex vivo, in situを含む広義の意味でのin vivo測定が報告されているものにはESRを用いたスピントラップ法,HPLCを用いたサリチル酸法および化学発光法などが報告されている.さらに非侵襲的な動物個体での測定となるとin vivo ESR法が最も有力な方法である.In vivo ESR法は現在のところ感度が悪いため,外因的なニトロキシルラジカルを動物に投与し,そのシグナル変化から間接的にラジカル反応を計測する方法が行われている.ニトロキシルラジカルは生体の様々な要因により常磁性を失いESRシグナルが減衰するが,スーパーオキシドやヒドロキシルラジカルによってもシグナル減衰を起こす.このシグナル減衰速度は酸化的ストレスにより亢進し,ラジカルスカベンジャー等を同時投与することによりこの減衰速度の亢進が抑えられる.この減衰の亢進を詳細に解析することで,生成したフリーラジカルの種類あるいは産生部位を特定することが可能で,更に抗酸化医薬品評価にも用いることができる.一方,ジチオカルバメート系鉄錯体を用いるとNOの測定も可能である.このようにin vivo ESRはフリーラジカルの関与を非侵襲的に解析することが可能であり疾病メカニズムの解明に多大な情報をもたらすと思われる.

キーワード: in vivo ESR,フリーラジカル,ニトロキシルラジカル,胃粘膜傷害,ESR-CT

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