日薬理誌 114 (4), 205-211 (1999)


抗HIV治療薬Nevirapineの薬理作用および臨床効果

武内 正吾、大杉  武

日本ベーリンガーインゲルハイム(株)
〒666-0193 兵庫県川西市矢問3丁目10-1

要約: Nevirapine(NVP)は,最初の非核酸系の逆転写酵素阻害薬(NNRTI)として分類される抗レトロウイルス薬である.NVPは核酸とは競合せず,Human Immunodeficiency Virus type1(HIV‐1)逆転写酵素の疎水性ポケット部分に可逆的に結合し,逆転写酵素の触媒活性を阻害する.また,選択性が高いため,HIV‐2逆転写酵素およびヒトDNAポリメラーゼを阻害しない.NVPは核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)に対して耐性を獲得したHIV‐1の突然変異株に対しても有効であり,また,NRTIsと併用することにより,HIV‐1逆転写酵素阻害作用に対する相加・相乗効果を示す.ヒトにおける薬物動態の特徴として,中枢神経系を含む組織全体に広く分布し,消失半減期が長いため,成人において200 mg 1日2回投与(200 mg 1日1回2週間投与後)で効果がみられることである.NVPはcytochrome P450 3A(CYP3A)を誘導するので,プロテアーゼ阻害薬(PI)との併用に注意を有するが,現在のところ,用量の調節が必要とは考えられていない.NVPとNRTIs/PIsとの3剤併用した際,特に抗レトロウイルス薬未治療患者で,血漿中HIV‐RNA量を長期間にわたって検出限度以下に抑制する.NVPに対する耐性株は単独投与では急速に発現するが,これには逆転写酵素の181番目のアミノ酸の変異が重要な役割を果たしていると考えられる.NVPに対する耐性株の発現は,3剤併用した際には遅く,その頻度も低くなっている.NVPの副作用は他の抗レトロウイルス薬と重複せず,主要な副作用は皮疹である.HIV治療においては,長期間血漿中HIV‐RNA量を20〜50 copies/ml以下に抑制することが目標となってきている.そのためには併用療法で忍容性が良好でかつ投与方法の簡便な薬剤が望まれている.これら併用薬剤の一つとしてNVPが有用であると考えられる.

キーワード: ネビラピン,ビラミューン(R)錠200,非核酸系逆転写酵素阻害薬,併用療法,臨床効果

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