グリア細胞の障害と保護
松田 敏夫 (1)、田熊 一敞 (2)、李 英培 (3)、馬場 明道 (4)
(1) 大阪大学大学院薬学研究科複合薬物動態学分野
〒565-0871 吹田市山田丘1-6
(2) 神戸学院大学薬学部分析化学教室
〒651-2180 神戸市西区伊川谷町有瀬518
(3) 神戸学院大学薬学部薬理学教室
(4) 大阪大学大学院薬学研究科神経薬理学分野
要約: 培養ラットアストロサイトを低Ca2+溶液に短時間曝露しその後正常溶液でインキュベートすると,細胞死を伴った細胞障害が見られる.この細胞障害は,アポトーシスの特徴であるDNAの断片化,核の凝縮等の生化学的,形態的変化を伴う.本細胞障害の発現には細胞内Ca2+濃度の増加,活性酸素の産生,NF‐κBの活性化が重要な役割を演じており,またこれらの過程にはカルパイン,カスパーゼ等のプロテアーゼが関っている.Ca2+流入後,産生された活性酸素はカルシニューリン依存的にNF‐κBの活性化を引き起こす.これらのシグナルカスケードの阻害薬は本細胞障害を抑制する.また,種々の脳機能改善薬も本細胞障害を抑制するが,それらの薬物の作用メカニズムは多様である.種々の細胞内シグナル伝達系がストレスに応答するが,これらのバランスのコントロールが障害保護の面から重要と思われる.
キーワード: 再灌流障害, アポトーシス, カルシニューリン, NF‐κB,
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