日薬理誌 114 (5), 295-302 (1999)


敗血症性多臓器機能障害におけるストレス応答

高橋 徹 (1)、鈴木 勉 (1)、山崎 晶 (1)、築地 崇 (1)、平川 方久 (1)、赤木 玲子 (2)


(1) 岡山大学医学部麻酔・蘇生学講座
〒700-8558 岡山市鹿田町2-5-1
(2) 岡山県立大学保健福祉学部
〒7819-1197 総社市窪木111

要約: 近年,敗血症は感染に対して全身的な炎症反応が亢進している状態(systemic inflammatory responsive syndrome: SIRS)として捉えることが提唱され,過剰な炎症反応にによるOxidative Stressが細胞を傷害し敗血症性多臓器機能障害(septic multiple organ dysfunction syndrome: Septic MODS)に陥ると考えられている.ヘム分解の律速酵素であるheme oxygenase‐1(HO‐1)はその遺伝子解析より熱ショックタンパク32としても知られており,基質であるヘムのみならず虚血再灌流等の酸化ストレスやIL‐6によって細胞内に誘導される.筆者らはlipopolysaccharide(LPS)をラットに投与することにより血中IL‐6の上昇を伴うSeptic MODSモデルを作成しHO‐1の動態とその意義について検討した.LPS投与後時間経過は異なっていたが,肝,肺,腎でHO‐1 mRNAの発現が認められ,肝ではそれに先立って細胞内遊離ヘムの上昇が認められ,肝HO‐1 mRNAの誘導にはLPSにより障害されたヘムタンパクより遊離したヘムが関与し,誘導されたHO‐1はpro‐oxidantである細胞内遊離ヘムを分解することにより肝保護的に働くことが示唆された.敗血症による障害の著しい肺のHO活性を特異的拮抗阻害薬Sn‐mesoporphyrinで阻害するとLPSによる肺障害の悪化が見られたことから,HO‐1は生体防御的に働くと考えられた.さらに白血球中のHO‐1 mRNAの発現がLPS投与早期(3時間)にIL‐6レベルの上昇に一致して増加したことからHO‐1が敗血症の新しい病態マーカーの候補となる可能性が考えられた.

キーワード: 敗血症性多臓器機能障害, リポポリサッカライド, ヘム, ヘムオキシゲナーゼ-1, 非特異的デルタアミノレブリン酸合成酵素

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