日薬理誌 114 (6), 327-336 (1999)


我が国における抗痴呆薬の開発状況(1999年3月現在)

長谷川 雅哉,野田 幸裕,前田 洋子,山田 清文,鍋島 俊隆

名古屋大学医学部・医療薬学・付属病院薬剤部
〒466-8650 名古屋市昭和区鶴舞町65

要約: 痴呆疾患に対する治療薬として現在臨床試験中および申請中の薬物について,文献検索,製薬・食品・繊維・化学の各企業へアンケート調査した.臨床開発中の治験薬は40種であった.作用機序により分類すると,脳代謝改善薬では,コリン作動薬が12種,コリン作動薬以外の神経伝達機能改善薬が12種,細胞内(間)情報伝達物質様作用薬が1種,神経ペプチド系薬が3種,脳エネルギー代謝改善薬が2種であった.脳循環改善薬は2種,脳保護薬は7種,その他1種であった.適応疾患から分類すると,アルツハイマー型痴呆(ATD)を対象とする臨床治験薬は16種で,脳血管性痴呆(CVD)では2種,アルツハイマー型痴呆の周辺症状(ATP)は1種,脳血管性痴呆の周辺症状(CVP)は2種であった.脳血管障害慢性期(CV)を対象とする臨床治験薬は5種,急性期では12種であった.その他の適応疾患では意識障害(DC)2種,脳梗塞(CI)1種,脊髄小脳変性症(SCD)1種であった(治験が重複するものがある).現在痴呆の中核症状を改善する薬物,即ち抗痴呆薬と呼ぶ治療薬は上市されておらず,上記薬物の中から抗痴呆薬と呼ぶことができるような薬物が一日も早く臨床の場にデビューして痴呆疾患の薬物治療が円滑に行われるようになることが待たれる.

キーワード: アルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆,治験薬

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