日薬理誌 115 (4), 219-227 (2000)


インターロイキンと神経伝達ペプチド

森岡 徳光、井上 敦子、仲田 義啓

広島大学医学部総合薬学科薬効解析科学
〒734-8551 広島市南区霞1丁目2番3号

要約: 炎症性サイトカインと定義される物質の一つであるインターロイキン‐1(IL‐1)βはマクロファージ等から放出され,炎症の惹起,持続に密接に関与していることが知られている.また,これらサイトカインは炎症以外にも様々な生理現象に関与していることが相次いで報告され,これらの作用の多くはサイトカインの単独作用ではなく,他の多くの生理活性物質との相互作用に起因することが見出された.その代表的な例としてIL‐1と神経ペプチドの相互作用により引き起こされる現象が挙げられる.これらには,痛覚過敏,神経性血管調節,炎症時における慢性痛,さらに交感神経節における可塑性などに対する作用が報告されている.さらに著者らは一次知覚神経細胞においてIL‐1βが神経伝達物質であるサブスタンスP(SP)の遊離を誘発することを見出した.このIL‐1βによる作用はIL‐1固有の受容体を介するものであり,なおかつシクロオキシゲナーゼの誘導によるプロスタノイド系が関与していた.著者らが見出した一次知覚神経系でのIL‐1βとSPとの相互作用が,炎症時における新たな痛覚感受機構の一端を担っている可能性が考えられる.

キーワード: インターロイキン‐1β, サブスタンスP, 脊髄後根神経節細胞, シクロオキシゲナーゼ-2

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